戸籍と家族観

我々弁護士は、仕事上戸籍を取り寄せることが日常的にあります。皆さんも相続などがあったときに戸籍を市役所で取り寄せたことがある方もいらっしゃるかと思います。

そこで、今回は戸籍にまつわる話と現在の戸籍制度について思うところをお話してみたいと思います。

 

戸籍とは、生まれてから死亡するまでの親族関係やその変動を公に証明するものです。ちなみに、戸籍に「戸」という字が使われているのは、古代中国で社会構造の最少単位が「戸」と呼ばれていたことに由来します。

日本の戸籍が全国統一的に歴史上初めてできたのは、天智天皇の治世下の西暦670年にできた「庚(こう)午(ご)年(ねん)籍(じゃく)」といわれています(なお、それ以前にも、欽明天皇治世下の540年に渡来人のための戸籍があったと日本書紀に記録があります)。現存する最古の戸籍としては、702年に作られた「半布里(はにゅうり)戸籍」で、奈良正倉院に保管されています。近代になってからの戸籍としては、明治5年に作られた「壬申戸籍」で、これが諸改正を経て現在につながっています。

 

現行の戸籍制度は、夫婦とその子ごとに編成されています(戸籍法6条)。また、結婚して配偶者ができたときは、新たに戸籍を編成することになっています(戸籍法20条)。このような夫婦親子で一戸籍とする戸籍編成になったのは、戦後の昭和23年(1948年)からです。その理由は、「夫婦・親子関係が最も自然かつ基本的な結合であり、またこれが親族共同生活態の類型である」と当時の法務担当者が説明しています。なお、それ以前の戸籍は祖父母から孫まで一つの戸籍になっていました。

このように、戦後から現在に至る戸籍制度は、同じ戸籍に記載されるのは親子二代までで、夫婦とその孫が同じ戸籍になることは認められていません(三代戸籍の禁止)。このような制度になっているのは、先ほどの法務担当者の答弁もあるのでしょうが、本音は戦前の「家制度」を廃止したことに伴い、戸籍制度も変更されたのだと思われます。

 

ところで、平成30年5月13日付毎日新聞の記事によると、孤独死した人の自宅を清掃・消毒して原状回復する「特殊清掃業者」が急増しており、この5年間で15倍に激増しているとのことです。平成28年の1人暮らしの高齢者数は約655万人(推計)となっており、核家族化も影響して孤独死が全国で相次いでいることから、特殊清掃業の需要が高まっているとのことです。人生の最後を誰にも看取られないまま、この世を去るというのはあまりに悲しい話です。

また、同じく核家族化によって、子育てが核家族内で担当せざるを得なくなったため、子どもは乳児段階から保育園に預けられるか、または養育者(多くは母親)が育児休業を取るかもしくは仕事を辞めているのが現状ではないでしょうか(以前は女性が結婚すると専業主婦になっていたため、核家族の問題が顕在化していませんでした)。

このような現状をみると、果たして夫婦親子という家族構成が「親子関係が最も自然かつ基本的な結合であり、またこれが親族共同生活態の類型である」と捉えるのが正しいのか疑問を感じざるを得ません。

 

一昔前(昭和の頃)は、家にはおじいちゃんとおばあちゃんがいて、お父さんとお母さんがいて、そして子ども達がいるのが大半でした。その家族構成では、日中働きに出ている父母に代わって祖父母が子どもの面倒を見ていましたし、高齢者が孤独死するなどという話はほとんど聞いたこともありませんでした。家族構成は、祖父母から孫までの三代が協力し合いながら営んでいくのが最も望ましいのではないかと、家族関係の希薄化に起因する近時の報道等を見てしきりに感じます。

戸籍制度一つだけで核家族化が修正されるとは思いませんが(一方で「家制度」が復活することはもっと考えられないですし)、せめて公証制度である戸籍から「三代戸籍禁止」を廃止し、最少家族単位を三代に捉え直してみてもいいのではないかと思うこの頃です。

 

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