教科書と民主主義

ある日ふと書店に立ち寄った際、「あなた自身の社会」という本を見つけ、少し興味を惹かれて読んでみました。この本は、スウェーデンの中学校の教科書になっている本です。

日本では教科書というと、無味乾燥でつまらないものというイメージがあるかもしれません。しかし、スウェーデンの教科書は日本でいう教科書のイメージとは全く違いました。内容は、法律や経済から始まり、税金や年金、生活保護などの社会保障、労働問題や消費者問題、いじめ、犯罪、薬物、さらには恋愛に至るまで、スウェーデン社会の様々なテーマを取り上げています。教科書の構成も、暗記を求めるようなものではなく、生徒が議論し、考え、答えを導き出そうという態度を養うことに主眼が置かれていました。そして、生徒が現実の社会事象にアプローチし、社会参加を促すような構成になっています。

例えば、「犯罪を犯すのは女性に比べて圧倒的に男性が多いことを、あなたは何故だとおもいますか。」「失業者になって最悪のことは何だと思いますか。」「どうして世の中の多くの人は、自信をもてないのだと思いますか。」といった問いが数多く並んでいます。生徒たちは、これらの問いについて生徒同士で議論し合い、答えを導き出し、あるいは考えを深め合うことができるようになっています。

このような生徒自ら考えることを促すスウェーデンの教科書はとても素晴らしい内容だと思いました。実際にスウェーデンの教育現場では、先生が教壇に立って皆が一斉に同じことをするという学習の形より、グループで勉強したり、個人で自習をするという学習方法が多いとのことです。これは、民主主義社会の一市民として自分の言動に責任がとれる国民を育てるのが学校教育の目標と考え、それゆえに、子どもが自分で考え、自分の意見が言える人になるよう育てることを目指しているとのことです。

一方、私が子どもの頃に受けてきた教育は、教師が一方的に教え、詰め込みを主体とする教育方法でした。また、近代になってからの日本の教育は、明治時代に「富国強兵」政策を推し進めるべく、教育の目標は、民主主義社会としての市民を育てることよりも、一流の経済人や科学技術者を育成することに主眼が置かれてきたように思われます(ちなみに江戸時代は、民は「知らしむべからず依らしむべし」で、武士以外はそもそも政治問題を教わることもありませんでした)。

明治政府の教育方法もあって、日本は確かに経済的に豊かになりましたが、民主主義社会としての市民を育てるという点については、どうも隅に追いやられているような印象です。そのためか、マスコミが報道する政治問題の論評の受け売りになっていたり、そもそも社会問題に関心が薄い傾向があるように感じます。

日本もここまで豊かで成熟した社会になった以上は、スウェーデンなどの成熟した教育制度の長所をもっと取り入れ、さらにより良い社会になっていけばといいなと思います。

 

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