不倫の示談書について書き方やポイントを詳しく解説します

監修:
弁護士 金国 建吾
2024年02月06日
不倫の示談書について書き方やポイントを詳しく解説します
不倫という深刻な問題に直面したとき、何をすべきか、どのように対処すべきか分からない人 も多いと思われます。特に法的な視点から考えると、示談や損害賠償などの複雑な手続きが関 わってくるため、専門的な知識も必要となります。 この記事では、示談書の作成方法や弁護士の選び方、その後の対処法など、不倫問題に関するあらゆる疑問や悩みについて幅広く解説します。 この記事を読んでいただくことにより,少しでも,不倫に悩む皆様の解決の糸口になれば幸いです。
目 次

不倫問題と示談書の基本知識

不倫問題に絡む法的な解決方法は複雑であり、その一部として示談についての理解が求められます。示談とは、そして,示談書とは何かを知ることで、問題解決にむけてのステップがスムーズに進むものと思われます。

示談とは何か?

示談とは、争いごとを解決することを目的とした、当事者同士の合意を指します。法的な争いとなると、裁判所での訴訟手続をイメージしがちですが、その前に当事者同士で話し合い、解決を図ることが示談です。配偶者の不倫が発覚した場合には、慰謝料の支払いや不倫関係の解消等について相手方方と交渉します。
ただし、この段階で各条件についてお互いが合意できない場合には、次のステップとして裁判があります。

示談書とは何か?

示談書とは、その名の通り、示談の内容を詳細に書き上げ、双方がその内容について納得した上で署名・押印した文書のことを指します。不倫の示談書には、慰謝料の額、支払い方法、支払い期限などを具体的に記載します。

また示談書は、示談内容を書面化することにより証拠として残すことができるというメリットがあり、後々、相手方方が示談内容を反故にするようなことがあっても、示談書をもとに裁判を起こし、示談内容を実現することも可能となりますので、示談書を取り交わしておくことは重要となります。

このように示談書は、不倫問題の解決には欠かせない存在なのです。

不倫問題における法的視点

私たちの社会では、不倫問題は個々の道義心や道徳観に大きく左右されますが、それだけでなく、法的視点からも見ることが重要です。法を基にすれば、どの行為が法律違反であるかどうかの判断基準が明確になります。本稿では、不倫問題を法的視点から考察していきます。

不倫を起因として法的問題が拡大するケース

不倫行為そのものは実は犯罪では無く、懲役や罰金などの刑罰を科せられることはありません。
しかし、不倫行為が原因となり暴力を伴うケースや、ストーカー行為に至るケースなどは、犯罪に該当する可能性があるため、それらに該当する場合,刑事法規に則り、刑罰を科せられます。

また、相手方の名誉を傷つけた場合や、プライバシーを侵害した場合も、民法により損害賠償の対象となる可能性があります。これらのケースに関しては、不倫そのものが罪でなくとも、その結果として発生した行為が法的問題となることを理解しておきましょう。

婚姻における不倫の扱い

不倫が直接的に法律違反とされることはないものの、日本の親族法(民法)においては,不倫が離婚原因となることを認めています。

不倫をしたことを証明することが出来るのであれば、例え、一方配偶者(不倫をした配偶者)から離婚を拒否されたとしても、裁判において離婚を認める判決を得ることも可能となります。この場合、不倫の証拠を十分に集めることが鍵となりますが、証拠の取り扱いにも注意が必要です。

不適切な情報の収集方法は、プライバシー侵害となり法的に問題となりますので、証拠収集にはプロの探偵などに依頼することも考慮すると良いでしょう。近年では、LINE等のSNSによるメッセージやメールの文章等が強力な証拠となるケースが多いといえます。

損害賠償と不倫の関係

不倫行為そのものは罪に問われませんが、その結果生じた様々な損害については、日本の民法上、損害賠償(慰謝料)請求の対象となりえます。

例えば,不倫によって配偶者との間柄が破綻し、精神的苦痛を被った場合など、不倫行為があったと認められれば、慰謝料の請求が可能となります。

ただし、その請求の可否や具体的金額については、司法の判断に委ねられます。また、不倫相手方との間に子が生まれた場合、養育費の問題が発生することもあります。これらも、具体的な案件や状況により法的な判断が求められるといえます。

示談書作成のステップ

争いごとを解決するための一つの方法として、示談があります。この示談では、裁判費用の出費を回避するというメリットがあります。

また、裁判では、原則として、金銭的な支払を命ずる形での解決しかありませんが、示談の場合には、金銭的な解決以外の解決方法(今後の不倫関係を解消し、接触を禁止する等の約束文言等)も明記することができるというメリットもあります。

このように、示談は、それぞれの立場から最良の解決策を見つけるプロセスの一部といえます。示談においては、通常、示談書の作成という形で締めくくられます。ここでは示談書を作成するためのステップと、示談書の基本形、そして示談に至るまでの交渉方法について説明していきます。

具体的な示談書作成フロー

まず、示談書作成の初めのステップは、両者間の合意(示談の具体的内容)の形成です。双方が示談の内容に合意した場合、次は、その旨を書面に記す必要があります。示談の内容については、具体的に何が争われていて、具体的にその紛争をどのように解決するのか、その内容を詳細に記載します。

合意が形成された後、示談書を作成するためには、やはり、弁護士や専門家に確認や相談をすることがベストな方法といえます。法律について十分な知識が無い場合、誤った文書であったり、無意味な記載を作成してしまう可能性もあるからです。その他にも、当事者において、意図した効果を導かない示談書の条項となってしまうおそれもあります。

このような過程を経て、示談書の各条項が完成し、示談書が完成した後に、双方がこの示談書に署名、捺印すれば、それが法的に有効な示談書として成立します。

示談書の基本形

示談書を作成する際、基本となる形式を押さえることは重要です。具体的には、以下のポイントに注意してください。

◆冒頭には、「示談書」というタイトルと作成日を明記

◆次に、当事者の名前を表記

◆本文では具体的な問題と示談の内容について詳述
・問題の背景となる事由(紛争内容)
・示談金の金額
・支払いの条件や方法
・不倫行為における示談の場合には、不倫関係の解消の約束や、そのための接触の禁止条項等を設ける場合もあります。

◆書類の最後には、当事者全員が自己の意思で署名、捺印  
・これにより、示談書の有効性が担保されます。

示談に至るまでの交渉方法

示談に至るまでの交渉方法や経過は様々ではありますが、まずは、自身の主張内容を法律的に整理し、主張することが必要になります。ここでは、法律的な根拠と説得力が必要になります。

この法律的な主張に対しては、相手方からの反論等もあると思いますが、自身の主張内容を一方的に強調するのみでは、やはり示談に至ることは難しいといえます。

そこで、最終的には、互いの意見を尊重し合う余地を残しながら最良の結論に向けて双方が歩み寄る形で、示談の内容が具体化していきます。このような過程で示談内容が定まり、それを文書化して、最終的な示談書としてまとめ上げ、取り交わしをすることで示談が成立します。

示談書を上手に活用するためのポイント

示談書を上手に利用するためには、その作成方法を理解した上で、具体的な活用方法を知ることが重要です。示談書は詳細までしっかりと作成し、それを適切に管理することで、トラブル時に大きな力となります。
ここでは示談書作成のコツ、具体的な活用方法について解説します。

示談書作成のコツ

具体的な示談書の作成法として重要なのが、全ての条項を詳細に記述することです。示談内容や交わした約束事など、示談の具体的内容の詳細を正確に記述することで、後日疑問が生じた際の対処に備えられます。ここでの記載が不十分な場合、問題が生じた時に示談書が機能しない場合も御座います。

また、示談金額や支払い予定日など、合意を取り交わした様々な条件も具体的に記載することが求められます。これは示談後に双方の認識に違いが生じないようにするためです。さらに、示談書は双方の署名や押印がなければ、有効に成立したことを担保することが難しくなります。

これらのポイントを押さえながら丁寧に作成することが示談書作成のコツとなります。

示談書の有効活用方法

示談書はすでに示談が成立している場合において、トラブルが再発した際に有力な証拠となり得ます。例えば、違約条項(約束違反の場合における取り決め)が明記されている場合で違約金が記載されている場合には、請求するうえで有用な資料となります。

そのため、作成した示談書は大切に保管していくことが重要です。また、示談書には、互いの約束事等、守られるべき双方の義務が詳細に明記されているため、その項目をしっかりと遵守することも重要です。

これらを心がけることで、示談書を有効に活用することが可能となります。

不倫の言い分をまとめる

不倫という行為は、民法上の違法行為として、不法行為に基づく損害賠償請求権(義務)を基礎付けます(民法709条・710条)。社会通念上においても、不倫行為は、受け入れられない行為とされていることは皆様もご存じのことでしょう。

しかし、当事者達がそのような行為に及ぶ理由、言い分を一概に否定することはできません。「配偶者間の関係が冷え込んでしまった」、「別居しており、既に婚姻関係が破綻している」等、不倫行為に及んだ者においても事情が存在する場合もあります。

また、場合によっては、これらが違法な行為ではなく、不法行為を構成しないというケースもあり、さらには、「相手方に配偶者がいることを知らなかった(故意がない)」というケースもあります。

したがって、一見、不倫行為とされる場合においても、互いの言い分をまとめる必要があります。

示談書における具体的な言い分の伝え方

不倫における示談の場面で、示談書の内容に盛り込むべき互いの言い分を具体的に伝えるとき、自身の事情をできるだけ理解してもらえるような言葉を選びながら、敬意をもって交渉に臨むことが重要です。この際、相手方への攻撃に終始するのみでは、示談の話に行き着かず、物事への解決にもつながらないことが多いといえます。

なお、請求されているケースにおいて示談解決を望む場合には、事実関係を素直に認め、「私の無責任な行為で多大な苦痛を与えてしまい、申し訳なく思っています。」といった自己反省の表明や、「私が起こした事態は許されないことであると、深く悔い改めております。」という謝罪の言葉を含めることで、相手方の理解に至り、示談につながる可能性もあります。

もちろん、交渉においては、自身の権利主張も重要ではありますが、示談による早期解決のためには、必要に応じて適切な対応をすることが求められるといえます。

依頼する弁護士の選び方

法律問題は一般の方にとって難解なことが多く、専門的な知識と経験が必要です。自身の主張したい言い分を効率的に的確に表現し、且つそれを法律の根拠を踏まえ主張するため、弁護士に依頼することが最善の選択となることが多いといえます。

ただし、全ての弁護士の得意分野が同じではなく、それぞれ専門や経験があります。ここでは、自身の問題に最適な弁護士を選ぶための基準や、費用の把握、さらに弁護士への依頼のメリットについて詳しく解説します。

弁護士選びの基準

弁護士の選び方には様々な要素が関係しますが、その中でも最も重要なのは、問題の性質に対する弁護士の専門性と経験です。特に法律問題は幅広く、離婚から借金等の債務整理、相続関係、商事法務など、それぞれに対応する専門知識と経験が必要となります。一概に弁護士の経験年数が多ければ良いとは限らず、問題に合わせて専門性を持つ弁護士を選ぶことが重要です。

また、初回相談における感触も非常に大切な要素の一つです。弁護士への相談では、相談者が問題を正確に理解して、適切なアドバイスを受けられたかどうか、その説明がわかりやすいかどうか、その弁護士とのコミュニケーションが円滑にできるかどうかを判断するための貴重な時間といえます。

このような観点から、弁護士を選ぶと良いといえるでしょう。

費用と相場の把握

弁護士への依頼のための費用は、法律問題の性質や難易度によるため、相場というものを一概に説明することはできません。

しかし、弁護士に依頼する前にある程度の目安を知っておくことは重要だといえます。一般的に、相談費用は、30分5,000円が通常であると思われます(この点も様々ありますので一概にはいうことができません)。依頼者する際の弁護士費用(着手金)や成功報酬金についても定め方は様々です。ですので、この点は、事前に説明を受け、きちんと理解したうえで依頼をすべきといえます。

また、その費用が妥当なものかどうかも判断材料の一つかと思われますが、その場合には、法律事務所が掲載するホームページ等を幾つか見て、判断することも有用かもしれません。

弁護士への依頼とそのメリット

弁護士への依頼は、専門的知識を要する法律問題をスムーズに進めるための手段であり、時間と労力の節約につながります。弁護士への依頼の最大のメリットは、専門的な知識と経験を活かして見通しを立て、自身の主張(請求されている場合は、防御方針)を適切且つ効率良く構築することにあります。弁護士は法律問題を十分に把握し、適切な解決策を提案する能力があります。難解な法律問題はそれらの専門家である弁護士に依頼することで、効率的に解決することが可能になるといえるでしょう。

また、法律問題は専門的な知識だけでなく、交渉力も求められます。弁護士はこれらの技術も持ち合わせており、訴訟だけでなく、示談交渉なども適切に行うことができます。自力で解決しようとすると、検討のための時間や法律知識の調査、さらには、文書の作成等に多くの時間を割かなければならず、多大な労力を要します。弁護士に依頼することでそれらの節約につながるものといえるでしょう。

監修:
弁護士 金国 建吾
愛知県豊田市出身、明治大学法学部卒業、中央大学法科大学院卒業、 弁護士登録(愛知県弁護士会)、清水綜合法律事務所勤務(愛知県名古屋市)を経て、金国法律事務所開設

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