慰謝料を請求したい方
夫もしくは妻が不倫をしていた事実が発覚した場合、当然のことながら多大な精神的苦痛を負い、だからこそ慰謝料を請求したいという気持ちになるでしょう。一方で、慰謝料を請求された場合においても、突然、弁護士から内容証明が届き、「どうしてよいかわからない!」といった状況に陥ります。
いずれの場合においても、当事者は多大な労力を伴うことは間違いありません。これらが理由で、本来すべきこと、例えば、仕事や毎日の生活に支障を来たしてしまうケースも多々あるようです。しかし、それでは元も子もありません。
そこで、以下では、請求する場合と、請求された場合の流れを含め、詳しく説明します。
慰謝料の相場
いろいろなサイトで「慰謝料の相場は○○円〜○○円くらい」といった記述が散見されます。
現に、相談者からもそのような問い合わせが多く御座います。
これらの金額的な断定については、一概に誤っているということはできません。しかし、かなり幅がある記載であるため参考にならないばかりか、特定の事案を前提にしない限り、その当否を述べることは難しいといえるでしょう。
ちなみに、裁判例においては、慰謝料の算定は、諸般の事情を総合考慮して決しているというのが正確であると思われます。ここで重要なのは、この「諸般の事情」とはいったい何かということです。
例えば、不倫が離婚や夫婦関係の破綻の原因になったらどうか、その夫婦の婚姻期間の長さ、子の有無・年齢・養育状況といった事情が挙げられます。
さらに、交際態様として、交際期間、交際に対する積極性、情交関係の回数・頻度等も考慮事情の一要素とされており、その他にも、考慮事情はあります。
このように、特定の事案を前提とせずに慰謝料の金額を相場化すること自体、やや正確さを欠いているといえます。正確な慰謝料の見通しを知りたいのであれば、やはり事案の内容を詳細に伝え、そのうえで金額の見通しを相談することが正しい方法であろうと思われます。
慰謝料の請求に必要な証拠とは?
証拠の代表例としては、深夜の着信履歴、メール等があります。 また、最近では、LINEのやりとりからも、両者の関係性を立証することが出来る場合が御座います。もちろんそれ以外にも、写真や電話録音、書面でのやり取り、旅行先での領収証等、様々な証拠が考えられるところであります。
しかしながら、これらの証拠から、どのような事実を立証できるのか、といった視点が重要になります。つまり、「仲がよさそう」、「親密そう」といった関係を立証できるのみでは足りない場合が多いのです。
それゆえ、慰謝料請求に必要な証拠として、どんな証拠が必要なのか、また、今ある証拠で請求するに当たって十分かどうかについては、専門家に相談されると良いと思われます。
どのような損害を請求することが可能か?
どのような場合に請求ができるのか、気になるところです。ご自身の事例と照らし合わせてみましょう。
慰謝料
不倫によって受けた精神的苦痛を金銭的に評価したものです。不倫相手へ請求する際の中心的な内容となります。具体的な金額については、諸事情を考慮の上、決せられます。
弁護士費用
裁判によって判決が出た場合、その認容額(判決によって認められた金額)の1割を弁護士費用相当額として請求が認められています。
しかしながら、この1割という金額では、実際の弁護士費用と比べると少ないのが通常なので、弁護士費用のすべてが認められる訳ではないといえるでしょう。
調査費用
この点については、肯定した裁判例と否定する裁判例とが交錯するところであり、一概に請求が認められると言い切ることは出来ません。 なお、慰謝料の増額事由として考慮している裁判例も見受けられます。
その他
それ以外にも、精神的苦痛により、うつ病等の精神的な疾患を抱えた際の治療費が認められるかといった問題もあります。これについても、原則として慰謝料の算定の際の一事情として考慮されるに止まるという程度にみるのが無難であろうと思われます。
解決までの流れ
1証拠収集
ご依頼者様から丁寧に事情をお聞きし、慰謝料請求が可能かどうかを判断します。
証拠収集に関しては個人で興信所などに依頼せず、まずは弁護士にご相談ください。
最近では、携帯メールやLINEなどのSNSのやりとりが証拠になることが多くあります。
2調査
不倫相手が誰か分からない場合、携帯電話の番号や住所等を手がかりに、
弁護士会照会や、住民票の取り寄せを行い、不倫相手を特定します。
3内容証明を相手方に送る
内容証明郵便で請求することにより、請求した具体的内容を証拠化することが可能になります。
なお、内容証明郵便には、「請求に応じない場合には法的措置を講じる」旨を記載しますので、
こちらの強い請求の意思を、相手に対して明確に伝えることができます。
4交渉
慰謝料の額がご依頼者様にとって満足なものになるよう相手と交渉します。
5示談or訴訟
示談交渉で話し合いがまとまらなければ、訴訟によって解決を図ります。
慰謝料を請求された方
3つの確認ポイント
1. 相手が言っている事実は本当かを確認
まず、相手が慰謝料を請求してきたときに、相手が言っている事実が本当かどうかを確認しましょう。相手が慰謝料を請求する方法は、電話、メール、弁護士からの内容証明などです。 裁判所から訴状などの書類が届くこともあります。ある日突然慰謝料を請求されたり、慰謝料を請求されるとパニックになってしまう方もおられます。
慰謝料を請求されたときはまず、冷静に相手が言っている事実が本当かどうかを確認することが大切です。 そもそも自分は不貞行為をしていない、相手に妻(夫)がいることを知らなかった、夫婦関係の実態がなくなったあとに恋人ができた・・・。事実関係の点で争えるポイントはいくつかありますので、まずは争えるポイントを探すことが大事です。
2. 相手の要求内容を確認
次に、相手がどのような要求をしてきているかを確認します。
具体的には、慰謝料の金額が高すぎないかが重要になってきます。慰謝料の金額は、不貞行為の期間や内容などによって変わってきます。きちんと対応すれば、相手が提示した金額を払わなくて済む場合も多くあります。事案によっては、相手の請求をはねのけることができる場合もあります。
また、相手が探偵に調査を依頼した場合、探偵の調査費用も請求してくる場合もあります。 そういった場合、本当にその調査費用を払わなければならないのかも、よく確認する必要があります。
3. 相手が持っている証拠を確認
相手がどのような証拠を持っているかを確認することも必要です。請求する側は、まったく証拠を持たずに慰謝料を請求することはできません。慰謝料を請求するには、不貞行為の事実を裏づける証拠が必要です。
証拠なんて残っていない、相手の請求には根拠がないと思って何もしないと手遅れになってしまうことがあります。専門家に相談した上で早めに証拠の収集に動けば、後々有利になることもありますので内容証明を受け取った時点で、行動を始めましょう。
慰謝料の請求が来たときは、迷わず弁護士に相談しましょう。
対処法
事実関係、相手方の言い分の確認
ある日突然、相手や弁護士から内容証明が届いて慰謝料を請求されることがあります。
そんなときは、まず内容証明に書いてある相手の言い分をよく確認しましょう。
相手の言い分に反論できることがないかを確認し、相手や弁護士からの内容証明を受け取ったら、まずは当事務所へご相談ください。
メールや電話などで請求された場合もご相談頂ければと思います。
相手方への反論を検討
相手の請求に対して、反論できるポイントがある場合があります。
そもそも不貞行為をしたことはない、交際相手が既婚者だとは知らなかった、交際を始めたときは夫婦関係は破綻していたなど、相手の請求をはねのけたり、減額できる事情があります。請求された側としては、こうした事情がないか検討します。
相手方との示談交渉
反論の検討をもとに、相手方との交渉に入っていきます。
請求された側として反論できるポイントがあるときは、書面で反論していくことが通常です。また、反論できる事項がない場合でも、相手は、最初は高めに金額を提示してくるのが通常ですから、少しでも減額できるよう交渉できることが多いです。
訴訟等、裁判所の手続
相手方との話し合いによる交渉がまとまらなければ、相手方は訴訟を提起する場合が通常です。
その場合、裁判所の手続によって解決を図っていきます。
相手方とのやり取りの方法
電話等ではなく書面でやり取りするのが基本!
交際相手の奥さんなど、請求してきた相手とのやりとりは、電話や実際に会ってという方法も考えられます。
しかし、基本的には、相手から電話やメールで請求された場合でも、相手の住所を確認して書面で返すようにしましょう。
書面でやり取りする理由は、「言った言わない」でもめるのを避けるためです。
また、電話で安易に回答すると、相手が録音していて証拠として使われてしまう危険もあります。
書面でやり取りするときに気をつけることは?
書面でやり取りする場合、相手に有利な証拠を作られないことが重要です。
電話や直接の面談による話と違って、書面は後々まで残ります。例えば、相手方に肉体関係を証明する証拠がないにもかかわらず、「私は不倫をしました」などと認める内容を書かないように十分に気をつけましょう。
メールでのやりとりの場合も同様に、書面と同じく後々まで残りますから、文面は慎重に考える必要があります。
弁護士にご依頼頂ければ、具体的なやり取りの際に、不利な証拠を作らないよう、常に意識しながら書面を作成します。相手とやり取りする前に、早めに弁護士へご相談頂くのがベストです。
内容証明郵便とは?
相手が慰謝料請求するときは、内容証明郵便も利用されます。
そもそも内容証明郵便とは、法的には通常の書面による請求と同じです。法的な扱いが手紙と異なるわけではありません。
しかし、郵便局が書面の内容を証明してくれたり、請求される側に対して事実上心理的なプレッシャーを与える効果があることから、弁護士が慰謝料請求する場合によく利用します。
解決までの流れ
1証拠収集
相手から内容証明が届いたら、早めにご相談ください。
内容証明で「2週間以内に○○万円をお支払いください。」と書いてあっても、
必ずしもその通りの額を払う必要はありません。
2相手に対する反論の検討
まずはお話をよくお聞きし、手持ちの証拠も精査し、慰謝料の支払いを拒むために相手に対して反論できることがあるか検討します。
反論のポイントはいくつかあるので、じっくりと検討します。
3相手との示談交渉
2の検討の結果、反論できるポイントがある場合はしっかりと反論します。
また、反論できるポイントがない場合でも、相手が請求してきている慰謝料の額が高すぎないか見極め、適正な額になるよう交渉します。
4示談or訴訟
相手との話合いがまとまれば示談という形で解決します。
また、話合いがまとまらない場合、訴訟等の裁判所の手続によって解決を図ります。