大部分が特有財産として認定され財産分与額の大幅な減額に成功した事例
相談背景
夫(依頼者)は,40代半ばを過ぎてから,現在の妻(相手方)と婚姻をし,2人の子供にも恵まれるが,性格の不一致を理由に,相手方が自宅を出て別居に至る。
その直後,相手方が離婚調停を起こし,依頼者としては,離婚自体を争う意向はなかったものの,財産分与が問題となった事案。
弁護士対応
依頼者は独身時代の預貯金等の財産(特有財産)が多かったが,相手方は,それを全て共有財産として財産分与を求めてきました。
依頼者の預貯金口座は多数あり,しかも,給与が複数の口座に振り込まれ生活口座として使用されていた上,多数の口座間で資金移動を繰り返していたため,一見して,特有財産と共有財産の区別が出来ない状況にありました。
そこで,全ての預貯金口座について婚姻時から別居時までの期間中の取引明細を取り寄せ,口座間での資金移動の一覧表を作成し,別居時の口座残高のうち,独身時代の預貯金を原資とする部分を特定し,特有財産の主張を行いました。
結果
その結果,裁判所が,当方の主張のうち大部分を特有財産として認定したため,相手方が求める財産分与額から大幅な減額に成功しました。
特有財産については,例えば,婚姻前に購入した不動産や車両等,共有財産に混入し得ないものについては,その立証が容易でありますが,預貯金については,独身時代の口座を,そのまま婚姻後の生活口座として使用してしまうケースが多々あり,別居時の残高のうち,どの部分が特有財産でどの部分が共有財産なのか争われる場合があります。ほとんどのケースでは,その区別をすることが困難で,特有財産が共有財産に混入したものとして取り扱われてしまいます。
本事案は,大部分が特有財産として認定された稀なケースですが,膨大な量の口座間の入出金を精査し,詳細な説明をすることにより,特有財産を特定することも可能であり,諦めることなく,粘り強く事実を積み重ねることの重要性が示された事案と言えます。