相手方代理人に対する誠意をもった交渉により調停を経ずに解決に至ることができた事例
相談背景
依頼者(夫)と相手方(妻)は婚姻をして,子を設けて数年間が経過した夫婦であったが,性格の不一致から離婚に至り,財産分与,離婚後の子の養育費等が争われた事案。なお,財産分与では,婚姻前から存在していた依頼者の借入金につき,妻の婚姻以前から有していた貯蓄から支払ったとして,立替金の存在を主張され,その返金を求められていた。また,妻の父親の資金で購入した夫婦使用車両につき,相当額の支払も求められていた。
弁護士対応
相手方は代理人弁護士を通じて,離婚の請求に加え,財産分与,上記立替金の精算,車両相当額の返金等,一切の精算を求めていた。これに対するこちらの対応としては,依頼者の貯蓄額等を精査したうえ特有財産を主張することにより分与義務の否定の主張を行うとともに,立替金の原資が相手方の貯蓄からであったとしても,婚姻中の生活費等を依頼者の資金から捻出していたからこそ相手方の貯蓄が婚姻時のまま維持できたことを主張し,実質的には,立替金の大部分が夫婦財産から捻出されたと見ることが出来るとの主張を展開し,相手方の請求を争った。車両についても,たとえ婚姻中に相手方の父が購入資金を捻出していたとしても,当初より依頼者の名義としていたこと,その車両が婚姻生活に使用されていた事実等を踏まえると,実質的に購入当時の当事者の意思の合理的解釈として,婚姻中の夫婦に贈与されたものと見るべきと主張して,車両ないし購入額の返金義務を争いました。なお,養育費については,養育費算定表をベースにしつつ,依頼者に有利な金額となるよう交渉した。
結果
上記弁護士間の交渉を経て,最終的に,相手方が主張する立替金相当額の半額に近い金額での解決金の支払をもって,すべての解決に至ることができました。まず,立替金については,上記のようなこちらの主張もあり得るところでありますが,立替金の原資が相手方の婚姻前から有する貯蓄からなされていたことや,仮に妻の貯蓄からの立替金の返済という事実がなければ,離婚後においても借入金の返済が続いていたことからすれば,一定の返済がなされるべき事案でした。一方で,車両については,夫婦に対する贈与と見る余地が多分にあったため,別居時における車両代金相当額が財産分与の対象とみる(つまり,別居時の車両の時価額を分与対象財産とする)のが合理的な事案でしたが,車両は,依頼者の所有のまま解決に至ることができました。結果的には,本件事案では,こちら側にとり有利な条件で解決に至ることが出来た事案でした。これらも相手方代理人に対する誠意をもった交渉があり,理解を得たからこそ,その協力的交渉や対応も相俟って,調停を経ずに解決に至ることができた事案といえます。本件では,仮に調停手続に入り時間を要した場合には,婚姻費用の支払いを依頼者は避けることができず,依頼者の経済的負担は大きくなった事案であるため,その点も加味したうえで交渉を行うことがとても重要であったといえます。